先日、NHKでもドラマ化されたレイモンド・チャンドラーの名作「ロング・グッドバイ」。放送を機に原作の「長いお別れ」を読んでみた。実はこの本、若かりし頃に読むのを挫折した長編。途中ダラダラと話が続くテンポにのれず、いつか読み直そうと本棚の奥にしまいこんだまま、引越ししたら無くなっていたのでした…。そんなわけでキンドルで買い直して再読。ハヤカワミステリの文庫版だと500ページを超える厚みがあるけど、キンドルはいいね。持ちやすくて。そして何といっても文字サイズを変えられるのがイイ。老眼が進み始めた自分にはかなり優しい機能。今回は途中で挫折することもなく読み終えることができました。
「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。」「ギムレットにはまだ早すぎるね」などの名セリフで知られるこの小説ですが、私が一番好きな部分は以下の一節。
「ぼくは店をあけたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気がまだきれいで、冷たくて、何もかもぴかぴかに光っていて、バーテンが鏡に向かって、ネクタイがまがっていないか、髪が乱れていないかを確かめている。
酒のびんがきれいにならび、グラスが美しく光って、客を待っているバーテンがその晩の最初の一杯をふって、きれいなマットの上におき、折りたたんだ小さなナプキンをそえる。それをゆっくり味わう。
静かなバーでの最初の静かな一杯 ──こんなすばらしいものはないぜ。」
昔、編集の仕事を始めた頃、「良い文章を書くには、良い文章を読むこと。」と教わりましたが、まったくその通りですね。まだまだ良い文章を書くにはおぼつかないですが。
(追記)
村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」。私は未読ですが読みやすいそうです。